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 No. 239 エントリー 2007/07/22(日) 14:45:05

[論点 4] インクカートリッジ訴訟と消費者について この記事をはてなブックマークに登録 この記事を livedoor クリップに登録 この記事の livedoor クリップ数

NIKKEI NETで興味深いニュースが発表された。

この点について、少々複雑なので、読者の中には、もしかするとミスリードをしてしまう人もいるかもしれないと判断し、今までの経緯をまとめるという意味合いも込めて、ここで一つ、整理をしてみたいと思う。

PCユーザーの多くは、プリンターを使用することが通常であるので、幾分か読者の判断材料に資するのではないかと私は考えている。

(続く)




□引用元:NIKKEI NET(日経ネット) 2007/7/22 07:00
偽造品トナーの販売業者に警告、キヤノンが国内でも対策本腰

キヤノンによると、トナーカートリッジの偽造品流通が国内で初めて確認されたのは昨年春。製品や包装にキヤノンのロゴなどを付け、一見しただけでは本物のキヤノン製と区別しにくい。その後の調査で国内で不良品として返品されたトナーの25%が偽造品だったことが判明。プリンターなどの故障などにつながる恐れもあり、キヤノン製品への顧客の信頼が揺らぎかねないとの危機感を強めている。


読者の中には、「キャノン」「トナー」と聞いて、インクカートリッジ訴訟関連のことかと思われた方もいるかと思われる。

しかし、これは当該訴訟とは意味合いが異なるので、その説明のためにも、そもそも、「インクカートリッジ訴訟」とは何かをまず初めに説明したい。

「インクカートリッジ訴訟」は、いろいろな訴訟を指しているのだが、ここでは特に有名なCanon vs. Recycle Asist caseについて考えることとする。

この訴訟は、ニュースでも数多く取り上げられたので、読者の方も知っている方も多いと思われるが、Canonのインクジェットプリンタの使用済みカートリッジに、インクを詰め直して販売する行為が著作権の侵害となるのではないかが争われた事件である。

この事件の背景には、インクカートリッジがその必需性にもかかわらず、相対的に高価であることから、そのカートリッジにインクを詰め替えて販売すれば、より安価に消費者に提供することができ、しかもリサイクルの精神にも資するという点で消費者に支持されてきたという経緯がある。

読者の方も、量販店などで急激にそのシェアを伸ばしている製品の一つであるとの認識をもつ人も少なくないと思う。

この訴訟は、消費者の多くがリサイクル業者を支持していることから、少々話が複雑となっている。

第一審の知的財産地方裁判所(知財地裁)は、消耗品、中古品には、特許権が及ばないことが一般的だが、新品カートリッジが販売された時点で、特許権が消尽するとして、Canon側の敗訴と判決した。
その後、Canon側は控訴し、その控訴審である知的財産高等裁判所(知財高裁)は、特許権は消尽せず、インクの再充填は特許侵害にあたるとして、Canonの逆転勝訴との判決を下した。

裁判の争点は、(私が判決文を見る限り)主に「特許権の消尽」についてであるが、知財法の論点であり、法的判断を必要とする論点であるので、この記事の趣旨にそぐわないと判断し、ここでは詳細な説明をすることを避けたいと思う。

ただ、端的に述べるならば、高裁は使用済みのインクカートリッジも特許権は消尽せず、リサイクル業者はインクカートリッジの工業的技術を侵害していると判断したということになるかと思う。
(要するに、使用済みのカードリッジとなっても、特許権は消えず、それを使って販売することはカートリッジの構造的特許(あの二重のスポンジ構造のことを指す)を侵害しているというわけである)

この判断の是非についてのコメントであるが、法的な見地からは、非常にオーソドックスで、合理的な判断であったと私は思う。

ただ、注意しなければならないのは、高裁が判断したのは、(工業的、法的な)技術的側面を判断しただけであり、リサイクルや消費者に対する社会的責任にまで含めて判断したというわけではないという点である。

※注意:高裁は、消費者の利益を侵害しているとの訴えを退け、
「キヤノンの特許権行使が消費者の利益を害しているという主張は、証拠上認められない」としているが、ここではそういう意味ではなく、構造的なことを指している。

この判決において、リサイクルの問題、インクカートリッジが消費者に不利益をもたらしているという構造的問題についてはいまだ解決されていない。

(1)リサイクルについて

リサイクルを推し進めることは時代の流れであり、企業の社会的責任に鑑みるならば、リサイクルに勤めることは業者の現代的責務であるように思われる。
もし、そうであるならば、リサイクル業者にリサイクルを実質上禁止するならば、それと同程度のことをメーカー側で対策することが、消費者の支持を得る方法として最善であるように感じられる。
消費者にとっては、リサイクルを自社で行おうが、第三者が行おうが、その点については重要な点ではない。実際に、積極的に、効率的に行われることが重要なのである。

しかし、メーカー側はそのリサイクル率を公表しておらず、またメーカーの不利益となることから、リサイクルについて消極的な姿勢をとっているように感じられる。

私はこの点は見直す必要があるのではないかと考える。

(2)インクカートリッジ料について

確かに、メーカー側としては、プリンターの低価格化により、プリンター本体の利益の赤字部分をインクカートリッジ等消耗品で補わなければ採算が合わないという側面もあるかもしれない。

もし、カードリッジのリサイクルが可能との判断が裁判所で出されたならば、きっとプリンター本体の値段を上げざるを得なかったと思われる。

しかし、消耗品等で利益を上げようとするならば、そのことは何らかの形で告知すべきであったろうし、そういうスタンスは、携帯電話と同じ類の問題を有していることを表しているともいえる。
すなわち、プリンターを頻繁に買い換える人が得となってしまい、消費者間で不公平が生じることとなってしまうという問題を抱えているのではないであろうか。

長く同じものを使うというリサイクルの精神からも遠ざかり、一昔前の大量生産、大量消費のスキームから抜け出せていないという謗りを受けても仕方ないような体質がそこにあるのではないかと私は感じた。

以上のように、メーカー側は、裁判所の判断とは別に、消費者の視点に立った対策を求められているのではないかと私は思う。


さて、幾分長くなってしまったが、最後に、ここで冒頭の話題へと戻ると、このニュースは、この問題とは性質を異にしている。

つまり、リサイクルが云々という話ではなく、そのままCanon製品の模倣している商品が市場に流通しているというニュースである。

ユーザーとしては、模倣品により被害を受ける恐れがあるのでその点を注意しなければならない。
これは、ただの偽物なので、以上のような趣旨で、リサイクルに資すると誤解し、積極的に購入することは避けた方がよいであろう。この製品の購入は、結果的に誰の利益にもならないと私は思う。

ただ、一連のニュースを知っているユーザーからは、この問題と混合してしまう人もいるかもしれないと思い、注意を促す意図で蛇足とは思いながら、記事とすることにした。

読者の参考となれば幸いである。

以上

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