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 No. 688 エントリー 2008/06/11(水) 00:16:42

[論点 25] ワーキングプア問題を抱える現代は実は昭和初期だったらしい この記事をはてなブックマークに登録

「蟹工船」が流行っていると聞いて。
なんというか、出版業界もいろいろと大変ですよね。

(続きはこちら)




蟹工船 - Wikipedia

あらすじ
カムチャツカの沖で蟹を獲りそれを缶詰にまで加工する蟹工船「博光丸」。それは様々な出自の出稼ぎ労働者を安い賃金で酷使し、高価な蟹の缶詰を生産する海上の閉鎖空間であり、彼らは自分達の労働の結果、高価な製品を生み出しているにも関わらず、蟹工船の持ち主である大会社の資本家達に不当に搾取されていた。情け知らずの監督者である浅川は労働者たちを人間扱いせず、彼らは懲罰という名の暴力や虐待、過労と病気(脚気)で倒れてゆく。初めのうちは仕方がないとあきらめる者もあったが、やがて労働者らは、人間的な待遇を求めて指導者のもと団結してストライキに踏み切る。しかし、経営者側にある浅川たちがこの事態を容認するはずもなく、帝国海軍が介入して指導者達は検挙される。国を、すなわち国民を守ってくれるものと信じていた軍が資本家の側についた事で目覚めた労働者たちは再び闘争に立ち上がった。


再脚光
作者の没後75年にあたる2008年の日本では、新潮文庫『蟹工船・党生活者』が古典としては異例の27000部を増刷、例年の5倍の勢いで売れ、5月2日付の読売新聞夕刊一面に載った。若者、特に就職氷河期世代に人気である。就職氷河期世代の多くは非正規雇用などの不安定労働者であり、ワーキングプアも少なくない。一流大学を出ても就職ができずに苦しんでいる者もおり、小林多喜二の捉えた世界観は今日の若者の現状と通じるものがあることを示している。


「蟹工船」悲しき再脚光 異例の増刷、売り上げ5倍 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

プロレタリア文学を代表する小林多喜二(1903〜1933)の「蟹工船(かにこうせん)・党生活者」(新潮文庫)が、今年に入って“古典”としては異例の2万7000部を増刷、例年の5倍の勢いで売れている。過酷な労働の現場を描く昭和初期の名作が、「ワーキングプア」が社会問題となる平成の若者を中心に読まれている。


「蟹工船」…
なつかしいですよね。私は、学生時代の頃に、「プロレタリアートブンガク」がどういったものかよく分からなかったので、とにもかくにもとりあえず読んでみたという記憶があります。
でも、そのときは、まさか、21世紀を迎えたこの現代にこの本が爆発的に売れるとは夢にも思いませんでした。出版業界もいろいろと頑張ったよね。

まあ、別に何が流行ってもいいのですが、ただその分析の仕方がちょっとひっかかるというか、単純すぎることに違和感を感じたりはします。
つまり、「ワーキングプアが増大した→これは昔の状況に似ている→蟹工船だ」
というのはあまりにもなんというか…という感じがしなくはないですよね。

今さらですが、ちょっとだけざくっと話すと、蟹工船というのは、これから共産主義が熱くなってくるという時代に出版された「プロレタリアートブンガク」の有名な本で、教科書とかにも載っているのでみなさんもよくご存じかと思います。
それで、その内容はというと、割とシンプルで、「「邪悪な」資本家たちのために労働者が劣悪な環境に陥れられている。だから、それに対してみんなで立ち上がっていこうじゃないか。」という、とても分かりやすく、そして読みやすい話です。

まあ、結論から言うと、確かに読み物としてはとっても興味深く、歴史的にも非常に意義があるものだと思いますが、そこにそれ以上の意味、つまり、それに現代を読み解くカギあるのだとするのはちょっと行きすぎの感がありますよね。

今回はそんな話をしてみたいと思います。

資本主義が発達しはじめた頃というのは、資本家さんたちは収益を上げることだけに関心があったので、労働者を劣悪な労働環境で非人道的に働かせて…とかいろいろと問題があったわけですが、我々はそれをたゆまぬ努力により乗り越えてきたという歴史があります。
※法律的には、主に労働法(労働三法)とかですね(それより昔は工場法とか?)

まあ、どこかの国では、確かに労働者階級が革命を起こして政府を作り、「素晴らしい」国を作ったところもあるそうですが、そうでない資本主義の国々、例えば、イギリスとかは労働者が革命を起こすのではなく労働者の利益を政党を通じて実現していこうといろいろな試行錯誤を経てきたわけで(フェビアン協会とかそのあたりのお話しね)、その結果として、現在では、イギリスの場合、「労働党」としてその役割を果たしているわけですよね。

それで、日本の場合はどうかというと、まあ、いろいろとあるのですが、一応資本主義国家の筆頭ですから、後者の方法をとってきたわけでして(政治的な話は揉めるので横に置くとして)、法律的に言えば、例えば、労働法の36協定とかそのあたりで、実はみなさんが思っている以上に結構頑張ってきたりしているわけです。

そこで今回の話ですが、そういう歴史をすっ飛ばして、今さら「現代は労働者に厳しい環境だ。うぉーみんなで革命だー」という意見もまあ、なんというかあってもいいのですが、実際問題としては、もはや歴史的にみてもそういう時代でもないですし、それに司法も行政もそれなりに頑張っているので、そういう方法じゃなくもっと現実的な解決を選択した方が賢明なような気はしますよね。
そういう意味で、今さら「うぉー」という話を読んでも、私は「どうなのかな〜」と思うのです。


とはいっても、ワーキングプア問題に関して言えば、やはり問題があるのは事実であって、例えば、フリーターを使い捨て労働とすることに対しては、やはり行政は何らかの規制、処置を施すべきだとは思います。他にも、賃金の面から言えば、時代が時代ですし、やはり時給は少なくとも1000円以上はデフォルトでないと現在の状況から言えば問題があるのではないでしょうかね(企業も厳しいとは思うけど)。
※あと労働局ももっと積極的に各事業書の労働環境をチェックすべきだとは思います

それに、組合の組織率も下がってきていますし、春闘も世界的競争力など他の要因などから毎年ベア0が恒例になってきていますから、現状で労働環境が悪化すると以前より労働者の方々は大変な環境に陥ることは間違いないことのように思われます。そういう意味では、蟹工船の時代に近いともいえるのかもしれませんね。


でも、だからといって、蟹工船の時代みたいに労働者の共通の敵は「資本家」だという構造に現代はないわけですから、蟹工船とワーキングプアを結びつけるのはやはり困難だと思います(一体何と戦えばいいのだろう?)。物事をあまりにも単純化することは非常に危険だと思うのです。客観的に分析すれば、もうそんな時代ではないのではないでしょうか。

例えば、ホワイトカラーもブルーカラーも、資本家も労働者も、現代では曖昧です。というか、そんな単純な区分けは通用しなくなってきています。しかも、昔と違い、問題は国内問題にとどまらずグローバル化しています。

それらを鑑みれば、もっと時代に即した考え方を生み出していかなければならない時代にきているといえるのかもしれませんね。ですから、あの分析のように単純な図式で説明できるほど現代は簡単ではないという意見も案外合理的であるように思えたりするのです。

みなさんはどうお思いでしょうかね。

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)
蟹工船・党生活者 (新潮文庫)小林 多喜二


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